お知らせ
帯状疱疹ワクチンで認知症のリスクが下がる?
皆様こんにちは。いよいよ乙訓地区でも帯状疱疹の定期接種が始まりました。
今回は帯状疱疹ワクチンと認知症の関係に関する最新論文について解説します。
~最新の研究からわかってきたこと~
最近、世界で最も権威のある科学雑誌『Nature(ネイチャー)』に掲載された研究で、
「帯状疱疹のワクチンを打つと、認知症のリスクが約20%減る」という注目すべき結果が報告されています。
● どういうこと?
帯状疱疹(たいじょうほうしん)は、かつてかかった水ぼうそうのウイルス(VZV)が、年齢や免疫の低下によって再び活動して起こる病気です。
皮膚に強い痛みが出るだけでなく、神経や脳に影響し、脳の炎症や血管障害を引き起こすことがわかってきています。
このウイルスの再活性化を予防することで、将来の認知症の発症リスクが下がる可能性があるのです。
● 最新の研究でわかったこと
イギリスで行われた大規模研究では、75万人以上の高齢者を対象に、帯状疱疹ワクチンを接種した人と、そうでない人を7年間にわたって比較しました。
その結果、ワクチンを接種した人では、認知症になる確率が明らかに低く、
「接種しなかった人が約18.5%発症」したのに対し、
「接種した人では約15.0%」にとどまっていました。
この差を比率で表すと、
1−15.018.5≒18.91 - \frac{15.0}{18.5} ≒ 18.9%
つまり、相対的に約20%のリスク低下があったと計算されます。
また、100人中3〜4人が実際に認知症を防げたとする**絶対リスク差(約3.5%)**も重要な結果です。
この研究では、ワクチンの接種資格が「生年月日」で決まるという制度を活用した自然実験の手法がとられており、因果関係に近いかたちで効果が示された点でも注目されています。
● 日本のワクチンと関係あるの?
この研究で使われたのは、アメリカ製のZostavax(ゾスタバックス)という生ワクチンです。
日本の生ワクチン(ビケン株)も、同じ「岡株(Oka株)」系統のウイルスから作られており、免疫原性や作用機序が非常に似ていることから、日本の生ワクチンでも同様の効果が期待できる可能性があります。
● 現在の主流:シングリックスでも効果がある?
現在、日本で広く使われているのは、不活化ワクチン「シングリックス」です。
これは生ワクチンではありませんが、帯状疱疹予防効果は生ワクチンより高く、持続期間も長いことがわかっています。
今回の研究で示されたような、ウイルスの再活性化による神経・脳への影響を防ぐというメカニズムが正しいとすれば、
シングリックスでも認知症予防効果が期待できる可能性は十分あると考えられます。今後の研究結果が待たれます。
● ワクチンにはどんな人が向いている?
50歳以上の方
帯状疱疹にかかったことがある、または不安がある方
将来の認知症を少しでも予防したいと考えている方
健康寿命を延ばしたい方
● 最後に
帯状疱疹の予防は、つらい神経痛を防ぐだけでなく、脳の健康を守ることにもつながるかもしれません。
当院では現在、生ワクチン、不活化ワクチン「シングリックス」の双方とも帯状疱疹予防接種を受け付けております。
ご希望の方は、お気軽にご相談ください。(075-754-6522)