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閃輝暗点について
閃輝暗点と片頭痛のしくみ
~光の見え方にひそむ脳のサイン~
「視界の一部がチカチカと光ったり、ギザギザした模様が現れて見えにくくなる」――
このような症状が数分から30分ほど続いて、その後に頭痛が始まる。
それは「閃輝暗点(せんきあんてん)」と呼ばれる、片頭痛の前兆かもしれません。
このコラムでは、閃輝暗点の正体と、その背景にある片頭痛のメカニズムについてご説明します。
閃輝暗点とは?
閃輝暗点は、視界の中に突然あらわれるチカチカした光や、ギザギザ・モザイク模様のような視覚の異常です。
多くの場合は、ゆっくり広がっていき、10~30分ほどで自然におさまります。続いてズキズキとした頭痛が起こるケースが多いですが、視覚の異常だけで終わることもあります。
頭痛が起こらない場合もあります
閃輝暗点が現れても頭痛が起こらない場合があります。これは「無頭痛性前兆型片頭痛」と呼ばれるタイプで、脳の中では片頭痛と同じ変化が起こっていると考えられています。
このタイプは、40代以降に初めて経験すると「脳の病気かも?」と不安になる方も多いのですが、脳の画像検査(MRIなど)で異常がなければ、経過観察で問題ないことがほとんどです。
閃輝暗点が起こる仕組み
視覚異常の原因と考えられているのが、「皮質拡延性抑制(Cortical Spreading Depression:CSD)」と呼ばれる現象です。
脳の視覚をつかさどる「後頭葉」という部分の神経細胞に、電気的な興奮とその後の抑制が波のように広がることで、一時的に視覚に異常が出ます。この波が広がるスピードと、視界の異常が広がる様子が一致していることもわかってきました。
この後、三叉神経が刺激され、炎症性物質であるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)が放出されることで頭痛が起こると考えられています。
閃輝暗点そのものにも治療効果が?
従来、CGRP関連抗体薬は片頭痛の「頭痛発作の予防」に使われていましたが、最近の報告では、閃輝暗点の頻度や持続時間も減少したという例があることが示されています。
まだ研究段階ではありますが、CGRPが脳の興奮の伝播(皮質拡延性抑制)にも関与している可能性があることから、閃輝暗点そのものに対する治療効果も期待できるかもしれません。
このような症状があればご相談を
毎回違う見え方をする
手足のしびれ、言葉のもつれ、ふらつきなどを伴う
40歳以降ではじめて経験した
発作の頻度が増えてきた
こうした場合は、脳の病気との見分けが必要になることもあるため、医療機関での診察をおすすめします。
おわりに
閃輝暗点は、脳が発する“静かなサイン”です。
たとえ頭痛がなくても、「おかしいな」と感じたら、遠慮なくご相談ください。
早期の対応が、安心につながります。